
桐生市を凝縮したような異空間 創業80年の老舗「芭蕉」
皆さんは「桐生市」と聞いてどんなイメージを持ちますか?
群馬県の県庁所在地の前橋市や、再開発進む高崎市よりも規模が小さい市なので、あまりイメージがないという方も多いと思います。
桐生市は群馬県の東部に位置し、かつては「西の西陣、東の桐生」と例えられたほど織物が盛んな市でした。市内には「重要伝統的建造物群保存地区」もあり、古い街並みが今も残っています。
戦中、幸いにも大きな空襲の被害を受けずに済んだ桐生市は、細い道がたくさんあります。
今回ご紹介するのは、市内のメインストリート「本町通り」から1本路地裏に入ったところにあるお店「芭蕉」です。
芭蕉は外観からすでに独特な雰囲気漂うお店です。入り口には詩と椿の描かれた暖簾が出迎えてくれます。中へ入ってみると、建物の複雑さに少々戸惑います。2代目店主の小池敏子さんに案内されるがまま、私は席に着きました。
こちらのお店は卓上に呼び鈴がありません。店員さんを呼ぶ際、どのように呼ぶかというと、各テーブルの近くにある楽器を鳴らして呼びます。その楽器は太鼓や鈴、ドラなど、テーブルごとにそれぞれ異なったものが置いてあります。店員さんはこの音を聞き分け、テーブルまで来てくれるようです。
こちらのお店、初代店主は「小池魚心」。魚心というのは本名でなく、ペンネームとのことです。ではなぜペンネームを名乗っていたのか。それは彼が版画や染め、建物の設計など、芸術家としても活躍していたからです。芭蕉の店舗の設計をしたのも魚心であり、店内にはいたるところに彼の作品が飾られています。入り口で出迎えてくれたあの暖簾も、実は魚心の作品なのです。
店内の作品を見て回っていると、「馬」をモチーフにしたものが多いことに気が付きます。『魚心がこれほど馬にこだわったのは、魚心が午年生まれだったことに加え、単に馬が好きだったからですよ。』と、敏子さんは語ってくださいました。
また芭蕉といいう店名は、魚心が松尾芭蕉のファンだったこともありますが、どちらかというと植物の芭蕉の意味合いの方が強いようです。
さて、店内を楽しんだところでようやく食事を注文します。
こちらのお店で人気なのは「印度カリー」ということで、私もそれを注文してみました。
印度カリーはキーマカレーに近いタイプのカレーでしたが、お肉はもう少し荒目な感じで、あとからくるピリリとした辛さがクセになります。ライスは少し固めに炊かれており、ルウとよく合い、とても美味しかったです。
そして敏子さんのおすすめはランチメニュー。特に「芭蕉ランチ」はハンバーグ、エビフライ、サラダ、ライス、味噌汁、香の物、飲み物、すべて込みで1000円(税抜)というお値段だから驚きです。その他創業当初から変わらない芭蕉のメニューの中には、「ぽーくそてー」や「ひれかつ」など、洋食メニューがメインです。秋にもなると「しいたけまんじゅう」というしいたけの肉詰めも人気とのことです。
じっくり見れば見るほど、知れば知るほど奥深さを感じる店「芭蕉」。
何度行っても新たな発見がありそうな不思議な店内で、ちょっとした非日常を体験してみてはいかがでしょうか。
TEL/0277-22-3237
営業時間/11:00~20:00(オーダーストップ)
定休日/水曜日・2週目もしくは3週目の火曜日