
このタグ、何をイメージしているか分かりますか?ほとんど毎日見ているアレですよ。
「あれ?ひょっとして“アンカンミンカン”のお二人ですか?」
喫茶店で取材中にテーブルの横からそんな声をかけられた。
確かにお笑い芸人に人違いされてもおかしくない、ロン毛ヒゲとボーズの対照的な風貌のコンビ。
対照的なのは外見だけでなく、ちょっとシャイなディレクターの上久保さん、
思ったことはガツガツ動くマネージャーの生方さん、
そんな33歳の同級生ふたりがプロデュースする桐生発の『山ストール』が
ジワジワとアウトドアシーンに浸透しはじめてきた。
事の経緯は5-6年前から、
元々子供のころからふたりともキャンプや野遊びが大好きで、
それが高じてカナダのバンフにもワーキングホリデーで滞在し、
「どうせ仕事をするなら好きなこと(アウトドア)をベースにやりたかった」
「せっかく織都桐生に生まれたからにはアパレルやテキスタイルで何かを起こしてみたかった」
そんなことを悶々と、沸々と、漠然とではあるが互いの気持ちの中でずっとたぎらせていた。
でもその“何か”って何だろう?
色々と模索しているうち、1年前に出会ったのがストールだった。
ストールというと一般的には冬のファッションアイテムというイメージかもしれない。
しかしながら彼らは素材や織り方、大きさもそれぞれ工夫を凝らし、
トレッキングやキャンプなど、使用するシーンをアウトドアにイメージして、
さらに近年進化し続けるアウトドアファッションにもマッチする、デザイン性にも
優れた『山ストール』で、自分たちのブランドからマーケットに勝負をかけてみた。
そのブランド名は“PRIRET”(プライレット)。
Private(プライベート)とSecret(シークレット)の造語で、
「自分たちが欲しいものを密かに作る」といった意味合いで名付けた。
『自然の素材であること』
『アウトドアで使えること』
『桐生を中心とした両毛エリアで生産すること』
この三点に主眼を置き、オリジナルの山ストールを展開している。
素材はシルクやコットンなど自然のものを使い、
全国的も希少なシャトル織機でゆっくりとふんわりと紡ぎ出される。
その独特な肌触りは、風通織(ふうつうおり)という文字通り風が通りやすい中空構造の
織り方のためで、これによりサラッと速乾性に優れてかつ保温性もあり、
夏でも冬でも使える仕上がりとなっているのである。
デザインもS.O.S.のモールス信号を色で表してみたり、
地元桐生の山間部の等高線をモチーフにしてみたり。
特にユニークに思ったのは、
ストールに縫い付けられたタグを見てみると、なんか何処かで見たことが…
あ、なるほど、桐生から見た赤城山のシルエットだ。
地元の野遊び好きのこだわりが随所に散りばめられている。
商品のPRもユニークで、たくさんの山ストールを持って実際に山に登り、
山頂にPRIRET仮説出張所を勝手にオープンし、登山客に使用感などを
モニタリングしたり、お洒落な巻き方をして写真を撮影してあげたりするらしい。
フットワークの軽いふたりだからこそできる販促活動である。
こんな地道な努力が結実し、正直まだまだコストや生産面など、商売としては発展途上ではあるが、
アウトドア誌やショップなど感度の高い関係者から注目されはじめてきた。
「やっぱり桐生だし、5年後はノコギリ屋根の下で仕事をしているイメージしかないんですよ」
「僕らの事を知っている人が、『あいつ等でもやれたんだ』って思ってもらえる存在になりたいですね」
ゆくゆくはテントやタープなどの素材にも携わってみたいとの事。
アウトドアにおけるテキスタイルの分野で、機(はた)どころ桐生発の若いふたりの挑戦がはじまった。