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この饅頭を復活させるのは僕の宿命だと思っていた

かつて前橋の名物として「片原饅頭」という酒まんじゅうがあった。

前三百貨店(今の前橋テルサ)の前に店を構え、
およそ100年以上もの間親しまれた地元の味であり、名物であった。

「あった」と過去形にしているのは、16年前に惜しまれて閉店したからだ。
手間がかかる製法や後継者不足で、残念ながらその長い歴史に幕を下ろすことになってしまった。

しかしながらこの名物を再現し、復活させた人物がいる。今回お会いした福島正幸さんである。

古くから競輪を知っている人なら必ず聞き覚えのある名前であろう。

70年代前半に賞金王を3回獲得し、トップ選手揃いで「群馬王国」と呼ばれた当時の群馬の競輪選手の中でも代表的なアスリートだ。

元競輪選手が酒まんじゅう?
なんだかとても不思議な結びつきである。

 

福島さんは34歳の若さで現役を退き、引退後はクリーニング店やぎょうざ店を数店舗経営する傍らでTVの解説もこなし、第2の人生も上々であった。
(余談だが、このぎょうざ店の1つにかつて高崎の貝沢にあったホワイト餃子があり、何でも野田の本店に直接修行に行ったとか)

商売も軌道に乗り、目標を失いかけていたころに片原饅頭閉店の話を聞き、前橋出身で幼いころからこの味に慣れ親しんでいた福島さんの気持ちに火が着いた。

「あの饅頭の味を絶やしてはいけない、これを復活させるのが私の使命・宿命って思いました」

「とはいえ、先代も伝統があるしのれんもある。そんじょそこらの人には任せられないって首を縦に振らなかった」

「でも昔っから人がやらない、やれないことに挑戦したいってのが私の生きざまなんだよね、とにかく熱意を見せましたよ」

酒まんじゅうのベースとなるのは糀の風味がたちこめる、いわゆる「元種」である。これを作るのに全国から麹菌を取り寄せた。そして知人から貰った酒まんじゅうの技術書のコピーをたよりに、温度管理や発酵の見極めなど試行錯誤を何年も繰り返した。

実は元種を試食させてもらったが、口の中に広がる風味はドブロクというか酒そのものであり、福島さんの作業はまるで杜氏の仕事である。これをゼロから始めたものだから昼夜問わず没頭したあげく体調を崩し、ドクターストップをかけられるほどだった。

何度も壁にぶつかったがそこは元競輪チャンピオンの執念、最後は片原饅頭の職人頭を突き止め、そこに日参して口説き落とし指導を仰いだ。
そして2004年に食品工場を改装した店舗で酒まんじゅうを売り出した。

復元された饅頭は皮のもっちりした食感、独特の歯触りと風味と酸味、そこに皮と同様に福島さんが心血を注いだ秘伝の漉し餡がマッチして、いわゆる酒まんじゅうとは一線を画す「本糀酒饅頭」として再び片原饅頭ファンの舌を喜ばせている。
(私は3日経って固くなった饅頭をオーブントースターで焦げ目をつけて食べるのが子供のころから好きであった)

 

「100%はいってないけど、9割は復元できたんじゃないかな」

製法については職人に引き継いだが、元種の管理については今も人任せにせず福島さんが担当している。

 

「私はこの片原饅頭が日本一だと思ってるし、負けない自信はあるよ」

「でもさ、競輪でも一番になったことあるけど、一番ってのはいつか辞めなくちゃならないんだよね」

「だからさ、日本のどこかに福島んとこの饅頭に追いつきたいって人がいると嬉しいわけ。そういう人がいると信じて頑張ってる」

いかつい上腕筋とは対照に、少年のように無邪気な笑顔でそう語っていた。

 

■酒種ふくまんじゅう「片原饅頭復元」 (有)正幸食品
住所/前橋市西片貝町4-16-40
TEL/027-243-5855
2012年08月27日 | ライター:塚本 輝雄 | 場所:| カテゴリー:  

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